Podcast #3 CareWizトルトの開発ストーリー

佐藤 知哉 株式会社エクサウィザーズ CareWiz トルト Tech Lead兼Product Manager
電気通信大学大学院卒業。在学中に株式会社ハンモックにて帳票管理アプリのプロトタイプの開発や画像処理によるOCR機能の認識精度向上のための研究に従事。大学院修了後にエキサイト株式会社にて機械学習やブロックチェーンを利用したプロダクト開発やデータレイクの開発、データマーケティングのリードを担当。2020年にエクサウィザーズにソフトウェアエンジニアとして参画し、自社プロダクトの開発やAIコンサル事業のソフトウェアシステムの開発及び導入支援などに携わる。現在はCareWizトルトの技術責任者兼プロダクトマネージャーとしてプロダクト戦略の立案や開発チームのリード、開発組織マネジメントやエンジニアの採用を担当。
 
※以下のテキストは社内向けに収録されたポッドキャストを学習モデルによって文字に起こしたのち、加工されたものです。
 
––本日は介護領域のプロダクト提供を行うCareWizチームから、佐藤 知哉さんに来ていただきました。佐藤さん、自己紹介をお願いできればと思います。
佐藤:
はい、私は現在ソフトウェアエンジニアで、エクサウィザーズでいろいろ仕事をさせていただいております。具体的な業務で言いますと、CareWizというサービスブランドが弊社にはございまして、そのCareWizのプロダクトの一つであるCareWiz トルトというもののプロダクトマネジメントをメインで業務させていただいております。元々私がテックリードだったこともあり、技術的な部分のサポートもやっています。現在はテックリードはまた別におり、その方と一緒に協力してプロダクトの改善やリリースを進めております。 よろしくお願いいたします。
 
––ありがとうございます。よろしくお願いします。 今お話に出たCareWizシリーズについて、もう少し詳しくお伺いさせてください。CareWizトルト以外にも、介護領域で新規開発しているプロダクトもありますが、CareWizシリーズを「こんな思想で作っている、こういう課題を解決しようとしている」というところをまず全体から教えていただきたいです。
佐藤:
エクサウィザーズ全体ではAIと仕組みというところの実装を強みとして持っており、それの強みを生かしながら多様性のある超高齢社会というものを実現しようというところのビジョンを持って我々今取り組んでおります。CareWizシリーズでは具体的に何するのという話になるかと思いますが、具体的には介護業界に今とりわけフォーカスをしておりまして、そこでテクノロジーですかね、先ほど触れたAIやシステムの仕組みを含めて経営や施設運営などの支援を行っています。
介護業界は、一般的にはかなり人手不足だったり様々な課題がフォーカスされていますが、やはりニュースなどで言及されている通りです。現場の方とかが抱えていらっしゃる問題や、介護事業所の経営をされている方の抱えている課題を一括で解決していくことを目指して活動しております。
CareWiz トルトというのは、CareWiz シリーズの一つのプロダクトになるんですけども、 介護業界の課題を面で解決していくといったときの一つのポイントとして、 営業の支援に効くようなプロダクトとして、我々がサービス提供しています。メインの機能としては、AIが高齢者の方の身体動作を解析し、現在の身体状況を可視化して、「こういう運動をした方がよいです」など今後生活する上での自律的な活動に対するリハビリメニューの提案を実現するアプリケーションになっております。
具体的には、例えばデイサービスなどのスタッフの方が、高齢者の方の身体活動の動画、わかりやすく言うと歩く姿や話をしている姿をスマートフォンで動画で撮っていただき、それを我々のCareWizトルトというプロダクトの方にアップロードしていただくと、解析やリハビリメニューの提案が実現されます。
 
––ビジネス課題の解決と身体機能のアセスメントというのはどのようにつながるのでしょうか?
佐藤:
高齢者の方向けのアプリではあるのですが、最終的なコアバリューで言いますと、 デイサービス従事者の方が普段サービスとして提供されているリハビリにCareWiz トルトを組み込んで頂くことを想定しています。取得された身体状況を可視化したレポートを高齢者の方にお見せすることで、 デイサービスでリハビリを行ったことによって身体機能・介護度の改善、例えば以前歩けなかった距離・時間が、リハビリによって改善したことが可視化できます。
介護業界ですと、ケアマネージャー様というケアのプランを策定されている方がいらっしゃいます。そういった方にCareWiz トルトの最終的に可視化されたレポートを見せることによって、 ご利用者さまがその事業所に通われるとモチベーションが上がったり、あとは運動機能の訓練等に力を入れているという事業所の施設のアピールにもつながり、よりたくさん新しいご利用者さまというのを集めるようなサイクルを作れるという観点で、 我々はその営業支援の一環のツールとしてサービスをご提供させていただいています。
あとは、福祉用具貸与事業者さんもメインのターゲットのひとつになっております。福祉用具貸与事業者様というと、杖や歩行器を高齢者の方に販売したりとかレンタルしてされている業種の方たちなんですけども、 そういったような方たちにサービスを提供しています。
 
––なるほど、ありがとうございます。 歩行解析の話題が冒頭ありましたが、これは具体的にはどのような分析をしているのでしょうか。
佐藤:
歩行解析は高齢者の方がおおよそ5メートルぐらい、歩数で言うと10歩ほど歩いていただく動画を撮影し、そこからPose Estimation、骨格推定という技術を使って、人間のおおよその骨格を画像から抽出するという学習モデルが実行されます。 そうすると動画の中の人間の骨格の位置が座標化され、その骨格の座標の点の移動の推移から、どういうような歩行を行ったのかを可視化するような機能になっております。
骨格推定にはいくつかのライブラリを活用しており、社内で我々の機械学習エンジニアの方たちに開発チームに参加いただいて、実装された社内システムを活用しています。姿勢推定は既存のライブラリが数多く存在しており、技術的には一般的と言える内容ではありますが、CareWizトルトにおける強みは座標から骨格の位置の時系列データという特徴量に変換する点です。得られた単純な座標データから歩行の状態がどういうものなのかを、 我々の知見を踏まえて実装しています。 具体的には、特徴量から歩行の状態を5段階評価で点数に表します。そこの点数化や、点数に至るまでの間接的な特徴量もありまして、 歩く速度や左右にどの程度ふらついているか、片足に加重がかかっているような軸足の左右差があるかなどの特徴量を判別しています。
このロジックの構築に関しては、もともと介護事業所や介護施設でスタッフとして活躍されていた経歴を持つメンバーがチーム内におり、大きく貢献しています。彼/彼女らは理学療法士や作業療法士というセラピストの方々で、歩行をすることによって生じるようなリスクを詳しく知っているエキスパートです。エンジニアが集計したロジックを一緒に見て、試行錯誤を繰り返しながら今の形に落ち着いています。
 
––ありがとうございます。機能開発の進め方はCareWizチームだとどのように進めていらっしゃるのでしょうか?
佐藤:
CareWiz トルトについては、約700事業所の方々にお使いいただいているサービスになっておりまして、日々いろんなお客様からご要望とかもたくさんいただいています。
多くの事業所さんから声が上がる要望ですと、それだけ市場にそういったようなニーズがあることが予想できますので、そういった切り口から実際にどういうものを望んでいるのかを、事業開発や営業、カスタマーサクセスのメンバーで既存顧客にヒアリングをかけ、 実際に市場としてその機能がどれだけ求められているのかの解像度を上げていく作業を最初にやりますね。そこからプロダクトマネージャーと事業開発が最終的な優先度を判断します。CareWiz トルトについては私が技術側のリードも検認しているので、技術的な判断も私が行います。
一方で、ごく少数の事業所さまから頂いているご要望でしたら、その事業所の方にはすごく貢献できるような機能かもしれないですけれども、一般的に見たらそこまで使われない機能のご要望を頂くこともあります。我々もそういったような声にもちろん応えていきたいのですが、我々のサービス全体としての質を上げていく観点としては、見送るしかないこともあります。
 
––機能開発の優先度づけはどのような観点で行っているのでしょうか?
意外性がないかもしれませんが、大きな判断軸の一つは事業の拡大があります。というのも我々もまだサービス提供をし始めたばかりであり、 事業として黒字化していくという面が目下の目標で、どれだけいち早く到達できるかどうかを重視しています。他にはカスタマーサクセスの観点で個々の機能をどれだけ実装していけるかも大事な、どちらかと言うと短期的な営業というよりは、中長期的なプロダクトの成長を見越しての投資と言う観点もあります。B2B2Cの中間のBの方である介護サービスの提供者の方々にとって使いやすかったり、トルトを使ったことによって最終的な高齢者の方、 ご利用者様から感謝されたり、モチベーション上がって一緒にトレーニング頑張っていただけるなど、そのような総合的な満足度もSaaSプロダクトとして継続していただくところにもちろん繋がると考えています。
短期的な開発と中長期的な開発の優先度のバランスは事業状況に合わせて変えています。最近は生成AIの登場などに起因して月単位で状況が変わることもありますので、例えばセールスの直近の単月・四半期の売上げなどがオントラックで進んでいる場合は、長期的なところにもう少しリソースを投下する判断になりますし、目下、短期的なところの売上げが不足していたり、解約がたくさん出てくる状況が発生してしまった場合には課題が起きているポイントにリソースを投下するっていうようなことをしています。まだまだ週次・月次でピボットしながら、 方針を変えながらやっている状況で、そのあたりはベンチャー的な動き方をしながら、CareWizチームで頑張っています。
 
––佐藤さん、ありがとうございました!